探検、そう言われて思い出すのはいつの記憶だろうか。もしかしたら、ずっとずっと前の記憶ではないだろうか。
田舎の祖父母の家の周り、初めて行った公園、学校帰りにわざと通ったいつもと違う帰り道。あの頃は、知らない道を通ることは全て探検だった。探検は散歩とは全く違う。どこに何があるかよく見て、帰れるようにしておかなければいけない。連絡手段を持っていなかったあの頃の私たちにとって、道に迷うということは何よりものリスクだった。
何を求めて探検していたかは分からない。当時もきっと分かってない。それでもあのときめきとスリルにかきたてられた気持ちは、何となくだが覚えている。
大人が探検をするのは、難しいのだろうか。未知へのときめきは、子どもだけの特権なのか。その答えを見つけるために訪れて欲しい場所がある。それが今回紹介する、日間賀島(ひまかじま)である。
心が躍る冒険には3つのポイントがある。
1つ目は、限りがあるということだ。自分の方向感覚を信じて道を決めるのが醍醐味だが、それが無限に続くのは望んでいない。体力と時間がない大人の冒険はサクッと楽しみたいので、限りある範囲と言うのは必須である。
2つ目は、道が複雑であるということだ。限りあるからと言って、碁盤目の道だったらどうだろうか。自分がどこにいるのか、たどり着く先がどこなのか、分からないスリルがたまらないのだ。思っている方向と違う方に進んでいたり、行き止まりに当たったり。それでいて、たまたま自分が知っている道に出たときのあの感覚を知っているだろうか。自分はタイムスリップかワープでもしていたのかと思うほどである。
3つ目は、新鮮味があるということである。例え家が並んでいるだけの路地裏であっても、初めて通る道なら色んな発見がある。もしそこが、自分の普段の生活と少し違っていたなら、より多くの発見ができるだろう。
この3つを兼ね備えた島が、この日間賀島である。一周歩いて2時間程度で回れ、限りがある。島の外周をぐるっと大きな道が通っている以外は、細い路地が入り組んでいる。そして何より、離島ならではのものが島中に転がっている。
内陸で生まれ育った私にとっては、離島の暮らしの全てが新鮮だった。海岸に打ち上げられたクラゲや、うねるように変形した地層、海へと続く階段。店先につるされたタコの干物、船がずらっと並んだ漁港、海の向こうに見える別の島。何度来ても新しい発見ができる自信がある。
観光地に行くとついつい、与えられるものを望んでしまう。しかし、自ら魅力を見つけ出すたびは、これまた満足感が高くなるものである。何があったか、そう聞かれてもこれといったものを並べることはできない。ただ、ふと思い出すあの島の風景が、日常から私を少し浮き上がらせるのだ。
ぜひ島の看板にあるこの地図を頼りに、冒険してほしい。あの頃感じた、未知への憧れと迷子への恐怖を思い出してほしい。自分の心の動きに敏感になって、それに従って生きることが、どれほど気持ちの良いことか、身をもって実感できるだろう。
今回紹介したのは、愛知県知多郡にある離島、日間賀島(ひまかじま)です。名古屋から一番近いこの島は、たことフグを筆頭に海鮮の美味しさを感じられる場所です。名物のタコの丸茹は、タコとは思えない柔らかい食感に間違いなく感動するはず。ぜひ、いつもとは違う観光をしたい方は訪れてみてください。